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Omotenacism for women女性のためのオモテナシズム

女性のリーダーは本当に危機に強いのか?

2020年5月31日

メルケル蔡英文新型コロナウィルスに対する国の対応で、多くの女性のリーダーが成功していることが注目されています。

ドイツのメルケル首相、台湾の蔡英文総統は特によく知られています。

女性であることと危機管理のリーダーシップとは関係があるのでしょうか。先日、企業研修で男性参加者に投げかけてみると「メルケルは任期もあとわずかだったし」だとか「蔡英文は香港情勢が追い風になった」だとかの議論が始まります。

 

その視点がまず女性と違う、と私は思います。

女性は価値観に基づいて行動します。本当に大切なことを解決しなくてはならないとき、自分の成功のきっかけにしようとは考えません。政局にしません。

 

女性はビジョンを策定するのが苦手ですが、価値観については明確に答えられます。

自分の価値観に対して女性は頑固です。

また自分が「やるべきこと」については突き進みます。

 

メルケル首相は経験なキリスト教徒だそうです。彼女は「愛」「自由」「信仰」を最も大切にしていると聞きました。だから、政治の信念と行動もそれに沿ってぶれません。

たとえば、ドイツの難民問題の場合でいえば、多くのドイツ国民が反対したとしても、ドイツに例え不利であったとしても、「愛」という価値観で考えれば、苦難にある多国の人々を受け入れることは自分のやるべきこと、だからドイツがそれを実現できるように国民に説得していこう、そしてそのための解決方法を見つけるのが自分の仕事だと、考えるのです。

今回もドイツ国民外出制限で国民の「自由」を縛ることに関して、自分の体験を踏まえて自分の言葉で丁寧に心から説明していました。メルケル首相は自分が「自由」を大切に思うからこそ、熱意のあるスピーチができたのです。

 

蔡英文総統は、マクロな視点と「論理的」であることを重視し、無欲です。だからコロナウィルスの状況を客観的に捉え、適切な人に権限を委譲し、そして台湾の安全と権利を内外に対し適切に主張しています。

 

二人ともぶれがないから、信頼が得られるのです。

そして二人とも、「自分らしくいる」ことを大切にしています。

 

男性が考えるように、国民の危機を政局としてとらえたり、成功のチャンスとは考えていません。

仕事を離れれば一国民として、家族との時間が一番大切だと考えている人たちです。

 

もちろん、女性のリーダーであっても、この危機を自分の成功にいかに使おうかと考える人は存在します。そういう人は女性であれ男性であれ人の支持は得られないのではないでしょうか。

 

生物学的にそして社会的に、男性が夢を描いて種を保存するために先へ先へと進んでいく習性を身に着けているのに対し、女性は目の前の自分の愛する人たちを守るために行動を取る本能を身に着けているとしたら、女性が危機に強いのは当然です。

 

もちろん、全ての女性が上手くやれるわけではありません。男性でも上手くやる人はいます。

いずれにしろ、強い思いと共感力、そして実行する勇気がなくてはできません。

まずは自分の信じることに自信を持ち勇気を持って、今、目の前の危機を乗り越えましょう。

女性はありのままで強いのですから。

 

参考:

「台湾初の女性総統が歩んだ道蔡英文自伝」 蔡英文著 (白水社)

「わたしの信仰」アンゲラ・メルケル著 (新教出版社)

「強い国家のつくり方 メルケルの世界戦略」ラルフ・ブルマン著(ビジネス社)

(YK)

価値観を感染させない

2020年3月24日

リッツカールトン桜今、得体の知れないウィルスの大きな脅威に世界中がさらされています。

大げさだと思うかた、不安にさいなまされているかた、皆さんの反応も様々でしょう。

こうしたときに人の価値観や生き方が見えてきます。外へ出かけるな、人と集まるなと言われて突然、いつものルーティンができなくなった人たちはなおさらです。トイレットペーパーを買い占める人もいれば、危険を指摘されているにもかかわらずライブに出かける人、免疫力を高めると言って食べたり遊んだりすることにいそしむ人もいれば困っている人のためにマスクを手作りして寄付する人、新たなビジネスチャンスだとプランを練る人もいます。

どれもそこには不安な気持ちがあるのでしょうが、そこには価値観が見えてきます。

 

私は何か困難なことが自分に起こったとき、いつも頭に浮かぶのは古い映画ですが「風と共に去りぬ」のシーンです。以前にも「風と共に去りぬ」の主人公スカーレットについてはこのコラムで書きましたね。

私が忘れらないシーンは、自分の家のビジネスが破綻すると知ったスカーレットが有力者に借金の申し込みに行くと決めたシーンです。彼女は、交渉へ行くためにはみすぼらしく見えないように新しいドレスが必要だがドレスを作るお金がない、と嘆きます。が、すぐに閃いて部屋のカーテンを引きずり下ろして美しいドレスに仕立ててしまいます。そして交渉は成功。ビジネスの危機は回避されます。

なんてたくましい。美しい女性なのに、なりふり構わず生き抜こうとする姿に圧倒されます。

何が何でも乗り越えよう、と思うときに私にはそのカーテンのドレスが目に浮かびます。「頑張ろう」と奮起するトリガーになっています。

しかし、小説(映画)ではありますが、こうしたスカーレットの激しい行動は、実は本人も気づいていない「家を守りたい」という一つの強烈な価値観に基づいています。

 

価値観とは、自分が大切にしたい「こと」や「もの」です。

オリンピックを人生の目標としているであろうにも関わらず、自ら勇気を持って中止を訴えるスポーツ選手は大切なものが名誉以上に健康であることが明確であるからでしょう。

危機に瀕したときにこそ人の行動にその人の価値観が見えてきます。

 

呑気に見えてもいざというとき、自分が大切なものを守るために非常に利己的になれるのは、女性の特性かも知れない、と言ったら怒られるかも知れませんが、女性は火事場のバカ力を出せる強さがあると思います。

 

現在のように「行きたいところへ自由に行けない」「会いたい人に会いにいけない」という状況の置かれていると、自分にとって何が大切なのかが見えてくるチャンスです。

これだけ言われてもライブに出かけるひとたちは、「健康」より「人と集う」ことが大切なのでしょうか。近くの人に感染させないことより、今年限りのお花見、どちらが大切でしょうか。

きちんと考えておけば、自分の行動の選択が簡単になります。

 

あなたの価値観は何でしょうか。

 価値観     女性が大切にしたいこと
1 貢献 貢献すること・手助けすること
2 成長 もっと知識を得たい・チャレンジがしたい
3 共感 共感できる相手との輪の中にいること
4 信頼 信頼されること
5 自由 自由にやり方を決めらえる・任されること
6 倫理観 ルールや常識を逸脱しない・善意で仕事をしたい
7 承認 努力や成果を認められること
8 完璧 間違えたくない・ベストを尽くしたい
9 自己愛 自分が大切にしていることを侵されたくない
10 金銭 金銭を得ること
11 安定 安心安全が保障されること
12 家庭 家庭・家族を大切にすること

ここに上げているのは12の例であって、人それぞれが持っているものはもっと他にもあるでしょう。例えば「健康」もここにはありませんが、もしかすると今、多くの世界の人の価値観の優先順位に置かれていることでしょう。

価値観は他人が良し悪しを決めることはできません。是非、自分の優先順位をつけてみてください。

マスクを作って寄付をしたいと考えている人は「貢献」が優先順位にあり自分の価値観を実践している人です。

やたらと不安に感じている人は「安定」が脅かされているからでしょう。

自分の不安の原因や気持ちを駆り立てるものが何かを考えると、自分の価値観が見えてきます。

そして、当たり前のことが当たり前でなくなったとき、取るべき行動を考えてみてください。

 

「風と共に去りぬ」にはもう一つ有名なシーンがあります。

全てを失ったスカーレットが「明日はまた明日」(Tomorrow is the another day)とつぶやくシーンです。現在、その明日が不安な世界ですが、明日を作るのは自分自身ですね。

トイレットペーパーをいくら買い占めても安心にはつながりませんよ。価値観まで感染させないようにしてくださいね。

(YK)