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Columnコラム

偽物と本物

2017年3月31日

フランクミューラー少し前ですがドイツの高級時計ブランドの

「フランクミューラー」が商標登録に対して

日本の時計メーカー「フランク三浦」に対して起こした訴訟がありました。

驚くことにフランクミューラーは敗訴。

その理由は、何百万円もする時計と

5、6000円程度の安価なフランク三浦の時計は、

明らかに判別が可能で間違えることがないからというのです。

びっくりしました。

 

高級ブランドを扱う会社に働いていた経験からすると

これは許しがたいブランドの侵害です。

このケースは、商品の形の模倣と名称が似ている、

という二つの要素に加えて

パロディとして茶化しています。

私はこれは「いただけない!」と思うのです。

フランク・ミューラーを持っているわけでもなく、

何の縁もゆかりもありませんが不愉快です。

 

ココ・シャネルはかつて、自分のデザインしたのとそっくりのシャネルスーツが

真似されて町に出回ることを、寛大に見ていました。

「私のデザインを皆が気に入って、安く手に入れられるならそれもいい」

確かに安い素材で安易に作られたものと本物は見分けがつきます。

しかし名前はどうでしょう。

ブランドとして問題なのは、自分の名前から逆に

偽物の名前が連想されることではないでしょうか。

せっかくフランク・ミュ―ラーを買った、と嬉しい気持ちになるはずが

「フランク三浦?」という名前がこの騒動で頭に浮かぶようになってしまいましたよね。

 

「ブランド」とは商品に付随する価値です。

商品の機能だけではない、外見と品質とイメージを顧客に保障しているのです。

そのイメージをフランク・ミューラーは侵害されてしまいました。

逆に「フランク三浦」だってブランドですが、それはパロディというブランドであり

借り物の価値を得たわけで、それを良しとするのは、おかしいなあと思うのです。

 

個人名で考えて見てください。

仕事でも趣味でも、あなたが何か作り上げたことが誰かに真似されるのは、

世の中あることです。

しかしあなたの名前を文字って、

自分がしていることより低い価値のことを提供されているとしたら

不愉快ではありませんか。

 

高級ブランドの争いなんて、あまり日常に関係はありません。

しかしこれが、日本の文化遺産や伝統工芸であったらどうでしょう。

なんだかこうしたことが通って行くと、

日本が安っぽい国になりそうな予感がしてしまうのは心配し過ぎでしょうか。

高い物だけが「ブランド」ではありません。

名称やイメージに対して、他人の物を借りることについて

隣の国を責めるだけではなく

もっと敏感でありたいと思います。

 

ちなみに、「オモテナシズム」もオモテナシズムが商標登録しています(笑)

YK

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和食は文化だ!緊張もおもてなし。

2017年3月26日

豊洲海鮮丼サミュエルお寿司屋さんに入るとき、あるいは少しだけ価格の高いお店に入るとき、

皆さんはどんな感じがしますか。

ちょっと緊張しますよね。

そして緊張する気持ちの中には、お店への期待感も含まれていますよね。

食への期待について、前回に続き、今回も香港の和食店から考えました。

 

 

昨秋、湾仔にオープンした「豊洲水産海鮮丼専門店」に行きました。

ちょうどお昼前、並んで待つ人のための椅子が外には並べられているところで

期待が高まります。

メニューを開くと、私たち日本人もヨダレが出そうな美しいお刺身が

贅沢に盛られている海鮮丼のオンパレード。

うっとりしてしまいます。

 

その時、20代の女性が、入ってくると一人カウンターに座りました。

すぐに注文をすると、長い髪をかき上げながら一人で座ってスマホを見ながら食事開始。

何を食べているのかしら、と店員さんにそっと確認すると、

220ドル(約3000円)の大トロの入ったマグロ丼です。

横から盗み見ると、パリパリの海苔が添えられていて、とっても贅沢で美味しそう。

現地の日本人に聞くと、会食であってもランチは130ドル程度(約2000円以下)が普通だと言いますから

一人のランチとしてはかなり贅沢です。

日本の会社員でも1人で20代の女性がカウンターで

3000円のお寿司を食べることはあまりないのでは。

さすが香港人、美味しい物であればお金に糸目はつけないのかも知れません。

ちなみに香港でもウニ、いくら、大トロが人気だそうです。

 

私はお財布を気にしながらメニュー選びに大変。

海鮮丼だけではなく、熊本から空輸された生ガキまでいただき

もうここは香港であることも忘れて舌鼓を打ちました。

確かにクォリティは日本とはもう変わりません。

 

海鮮丼

その隣で、さっきの彼女。

それにしてもリラックスしています。

もし私があの女性の年代のOLであったら(OLではないのかも知れませんが)

3000円のランチであったら、

もっと緊張しているか、

あるいはもう少し気取っていると思うのです。

「今日はお寿司、食べますよ!」

というような。

それが全然ありません。

見渡すと、誰にもそんな期待感やウキウキ感はありません。

普通に、ワンタン麺食べに入るときと変わらない日常な感じがします。

うーん、ちょっと違う感じ。

 

海鮮丼も美味しいし、応対も決して悪くはないのですが、

何が違うのでしょう。

これは、従業員がこちらに対して緊張をしていないことにあるように思います。

優しい雰囲気の従業員がそろっているのですが、ピリピリ感がない。

お店の空気はそのまま香港のお店です。

30ドルのワンタン麺なら良いけれど

日本人としては、和食であれば、ましてや200ドルの海鮮丼ですから、

やっぱりお客様として緊張して接客して欲しい気がします。

これは、文化の違いなのかも知れないと気付きました。

 

 

経営者のMr.Smuel Chu(サミュエルさん)にお話を聞いてその理由が分かりました。

香港では、どの飲食店でも従業員を定着させることに苦労があると言います。

同じような仕事はいくらでもあるので、

少し細かく注意をすると、だったらもっと簡単な店で働く、と去って行くそうです。

従業員を定着させるためには、

売上達成のインセンティブやあれこれをモーチベーションを

高める努力は欠かせないようです。

あまり厳しく緊張させることは出来ないですね。

日本も似たような状況はありますね。

 

とはいえ、4人に1人が日本へ旅行する香港、

そのうちに香港でも日本的サービスの雰囲気が

現地の人からも求められて行くでしょう。

 

和食はトータルの雰囲気が重要です。

文化遺産ですから。

和食は文化なのです。

それは「しつらえ」「よそおい」そして「ふるまい」がそろって完璧になります。

食事は、美味しければ良いのではないのです。

 

サミュエルさんは、日本のとんかつ・かつ丼のチェーン「かつや」も香港で

展開しています。

日本で勉強し、白木屋に勤務していた経験から、和食に投資したい人達から請われて

和食店ビジネスの道に入ったそうです。

日本語が達者で日本の良さをよく理解して下さっている若き経営者です。

メニュー開発は日本人シェフが必ず行うなど、

彼のミッションは、日本式ではない本当の和食をリーゾナブルに香港に届けること。

一方、サービスについても日本と香港の違いを認識し、チャレンジを感じていらっしゃる

ようでした。

 

是非、味の次にはサービスの質についても日本以上に素晴らしいという

レベルを実現して欲しいと期待しています。

 

是非、「豊洲水産海鮮丼専門店」豊洲入口

香港滞在の際、中華に飽きたら行って見てくださいね。

YK

 

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和食の現地化に大切なことは?

2017年3月19日

今や和食は世界で注目されるもっとも人気のある食事のひとつ。Hudson
食の香港でも17000軒ある飲食店の7.8%が日本食レストランだそうです。

 

香港で今、話題の和食レストラン「URA」を経営する
Hudson Changさんにお話を伺いました。
Hudsonさんのファミリーは元々インドネシア華僑でインドネシアレストランを経営しているそうですが、
日本を訪問したり日本人と知り合いになるうちに
香港で、日式(日本式のローカルな料理)ではなく、本格的な和食を香港人が好む形で提供したいと
URAを始めたそうです。

 

URA1

コンセプトは居酒屋。
お酒も飲めて色々な物も選べてということだそうですが、
ランチメニューでもHK$100~HK$300(1400円から4200円)
中々、香港では高級店です。
ターゲット顧客は店舗がある、セントラル地区(日本で言えば丸の内)のハイエンドを
狙っているそうです。
セレブリティが来るとパーティションで個室になるような仕組みもされています。

 

 

彼が香港の飲食ビジネスで重要だと思うことは3つ。
1に品質。食材は大阪の魚市場から空輸されているとのこと。
2にクリエイティブ。こんなの食べたことない!というような驚き。
3つ目が現地に合わせたフレキシビリティだそうです。

 

例えば、日本人と中国人のおもてなしへの考え方の違い。
日本は「おまかせ」というと、シェフの出してくれたとおりに黙って食べる。URA チラシ
シェフとお客様は同等です。
それが、中国人であったら、「おまかせ」を頼みながら「でも僕はそれはもっと焼いて欲しい」とか「ワサビじゃなくて生姜にして欲しい」
などと、必ず注文を付けるそうです。
そして、常に自分はお客なのだから、そのとおりに料理をして当然と思っているのが
中国人だそうです。

 

これを、良い、悪い、だとか、無知だとかで判断してしまうのではなく
文化の違いとして受け止めて、一流の和食を香港人が喜ぶように提供することが
香港で成功する秘訣だと彼は考えています。

 

Hudsonさんは日本の食の歴史を勉強すると、
日本が海外から様々な影響を受けて、色々な食事を生み出して来たことを知ったそうです。
ラーメン、カレー、餃子、天ぷらなど、皆、外国の食を日本式に変化させたものです。

Hudsonさんも本格的な和食でありながら、
香港の人の好みにあう物を生み出して行こうとしています。
明太子トーストやウニカルボナーラうどんなどがその例です。

 

一方、彼も既存の日本の有名チェーン店を香港に持ってこようとしています。
中国人は抹茶が大好きということで、
かれは、京都茶店「辻利」のスイーツやお茶を扱う店舗をオープンさせています。

今、とにかく日本食は香港で大人気。
ほとんどのショッピングモールが、9割がたを日本食レストランに招致したいと考えているそうです。
だからこそ、ロケーション選定は重要です。

 

スピード感のある香港では、トライ&エラーで、まずは試してみるという勢いでビジネスが
展開しています。
今回の滞在で、和食をビジネスチャンスとして見ている起業家に多く会いました。
本家本元の日本人も負けていられませんね。
(YK)

 

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