政治家の言葉から~多様性を活かすオモテナシズム~
2021年10月24日
神奈川宿高札場跡
選挙も近づき政治家の討論会を聞いていて、気になるのは言葉遣いです。野党も与党も課題は山積です。
某首相は常套句が耳につきます。就任演説で使われたのは「全員野球」。その後も何回もおっしゃいます。が、少し古い印象を持つのは私だけでしょうか。全員でやるならあなたは何の役回りなのだろう、とつっこみたくなります。
毎回の討論会では「私が車座になって話をすると・・」という表現を使われています。辞書を引いてみると「車座」とは円形になって話すこと、と書いてあります。若い世代はあまり使わない言葉ですが、通じるのでしょうか。それに感染対策大丈夫ですか?そして本当にやっていますか、と疑いたくなります。
またこの「辞書を引いてみると」という言葉をよく使う人がいますが、これも結婚式の挨拶みたいで本当に自分の伝えたいことがない時にあるパターン。自分自身の思いがこもらないとってつけたような話が始まる時の前置きです。
月日の重みを語るときに「オギャーと生まれた子供が小学生になる」という表現を使う人がいます。それはそうなんだけれどセリフのようで、あなたの感覚を聞きたいと思います。
常套句は共通認識がなされていれば分かりやすいのですが、時に陳腐になってしまう危険性があり、多様性の時代にあってはニュアンスを分かち合えない場合もあります。
また政治家については言葉遣いそのものの課題。
例えば「お示しをさせていただく」。「示します」ではなぜいけないのだろう。せめてお示しします、で留めてもらいたい。
「させていただく」がつくとなんだかこちらが「示してもいいですよ」と言わないと、黙ったまま示さないつもりかなと思ってしまうし、受け身の言葉です。
「専門家にご意見を仰いだところでございます」。この「ところ」は現在完了件を示しているのでしょうか。だから文句を言うな、と示唆しているように聞こえてしまいます。
また、今朝の討論会で某党首が「首相が申し上げられたように」と発言をしたのにびっくりしてしまいました。天皇陛下と会話しているわけではないんだから「申し上げる」は謙譲語で「首相がおっしゃったように」の間違いです。
少し辛口ですが、私が気になる言葉をあげました。私だけではなく、引っかかる言葉は、それぞれにあるのではないでしょうか。
本当に大切なことを語るときには、使い古された言葉や表現ではなく、自分の言葉で語りたい。
女性が公の場で発言出来ない、という話をよく私はしますが、そもそも女性に限らず、日本の文化はあまり語ることに重きを置かずにいます。不言実行、が評価されるので不必要な会話をしない。結果、ビジョンを語れないリーダーも多いのではないでしょうか。
多様な人と生きる時代では、語らなければ共感も合意も得られません。「口は禍のもと」などと言っていられません。「禍のもと」にならないように正しい言葉遣い、そして自分の言葉で話すこと心がけていきましょう。
(YK)
違いが分かる日本人になりたい!
2021年10月15日
「出されたものは文句を言わず、ありがたくいただきなさい」
そう言われて育った方は多いでしょう。だから、残したり食べられないなどと言われたりすると、「なんて礼儀のない人だ」と思う人も多いでしょう。
日本では、旅館などが典型ですが、しばしば相手の希望を訊かずチョイスもなく「当店の自慢料理です」「季節のものを用意しました」などと相手が喜んでくれるだろうと自分が勝手に最高と思うものを提供する傾向があります。
「スープは飲み干してください」などと指示するラーメン屋さんもあります。
出された側は、出してくれた側の思いを慮ってありがたくいただく・・・
それが「おもてなし」をする側される側のマナーとされてきました。でも、本当にそうなのでしょうか。
飛行機に乗るとき、特別食(スペシャルミール)をリクエストできることをご存じですか。お子様向けのチャイルドミールや、糖質制限やアレルゲン対応など体質や健康に関わるものや、菜食主義やヴィーガンなど食べ物への主義や趣向、そして宗教に配慮したものなどそれは驚くほどのバラエティに富んでいます。
キャセイパシフィック航空のCAであった私は、当時、香港発ボンベイ(現在はムンバイ)行きのフライトのギャレーを担当すると、まず驚くのがスペシャルミールの数の多さでした。多い時では、カート4台分(つまり100食くらい)がスペシャルミール。つまりご搭乗するお客様の半分ちかくがスペシャルミールになります。
リクエストを忘れているというお客様もいますから、こうした便では、通常はお肉かお魚、というようなチョイスもベジタリアンミールかノーマルか、というようなチョイスに設定されています。
キャセイは香港をベースとしていますから、日本の航空会社と比較すると国籍は様々なお客様が乗っていらっしゃいます。
ひとつひとつトレイに席番号が貼られているので確認に席まで伺うのですが、お客様は席を交換しているから至難の技でした。「もう、同じもの食べて我慢してよ」と思ったものです。
しかし、このカート4台分の異なるミールが象徴していたものは、まさに「ダイバーシティ」だと、横山真也氏の『おいしいダイバーシティ』を読んで気づきました。
100人の人がいれば、食事の在り方も100人異なる。好みだけではない、健康の問題、主義の問題、そして宗教の問題。たかが食ではない、大切な価値観です。
最近よく、テレビで「ドバイに行ったらお寿司が人気だった」というような、日本食は世界のどこでも最高だと自画自賛するような番組を目にします。本当に外国人はそう思っているのでしょうか。
きっと海外で成功しているレストランは、その国の宗教や風土に合わせての工夫をしているはずなのですが、そのところはあまり伝えていません。
食の好みも習慣も一人一人が違うということに気づかないと、日本は「おもてなし」の押し付けの国となってしまうかも知れません。
十人十色と言いますが、十人十食。違いが分かる日本人になりましょう!
(YK)
参考: 「おいしいダイバーシティ 美食ニッポンを開国せよ」横山真也著
https://www.amazon.co.jp/dp/4907239440