logo

Columnコラム

和食は文化だ!緊張もおもてなし。

2017年3月26日

豊洲海鮮丼サミュエルお寿司屋さんに入るとき、あるいは少しだけ価格の高いお店に入るとき、

皆さんはどんな感じがしますか。

ちょっと緊張しますよね。

そして緊張する気持ちの中には、お店への期待感も含まれていますよね。

食への期待について、前回に続き、今回も香港の和食店から考えました。

 

 

昨秋、湾仔にオープンした「豊洲水産海鮮丼専門店」に行きました。

ちょうどお昼前、並んで待つ人のための椅子が外には並べられているところで

期待が高まります。

メニューを開くと、私たち日本人もヨダレが出そうな美しいお刺身が

贅沢に盛られている海鮮丼のオンパレード。

うっとりしてしまいます。

 

その時、20代の女性が、入ってくると一人カウンターに座りました。

すぐに注文をすると、長い髪をかき上げながら一人で座ってスマホを見ながら食事開始。

何を食べているのかしら、と店員さんにそっと確認すると、

220ドル(約3000円)の大トロの入ったマグロ丼です。

横から盗み見ると、パリパリの海苔が添えられていて、とっても贅沢で美味しそう。

現地の日本人に聞くと、会食であってもランチは130ドル程度(約2000円以下)が普通だと言いますから

一人のランチとしてはかなり贅沢です。

日本の会社員でも1人で20代の女性がカウンターで

3000円のお寿司を食べることはあまりないのでは。

さすが香港人、美味しい物であればお金に糸目はつけないのかも知れません。

ちなみに香港でもウニ、いくら、大トロが人気だそうです。

 

私はお財布を気にしながらメニュー選びに大変。

海鮮丼だけではなく、熊本から空輸された生ガキまでいただき

もうここは香港であることも忘れて舌鼓を打ちました。

確かにクォリティは日本とはもう変わりません。

 

海鮮丼

その隣で、さっきの彼女。

それにしてもリラックスしています。

もし私があの女性の年代のOLであったら(OLではないのかも知れませんが)

3000円のランチであったら、

もっと緊張しているか、

あるいはもう少し気取っていると思うのです。

「今日はお寿司、食べますよ!」

というような。

それが全然ありません。

見渡すと、誰にもそんな期待感やウキウキ感はありません。

普通に、ワンタン麺食べに入るときと変わらない日常な感じがします。

うーん、ちょっと違う感じ。

 

海鮮丼も美味しいし、応対も決して悪くはないのですが、

何が違うのでしょう。

これは、従業員がこちらに対して緊張をしていないことにあるように思います。

優しい雰囲気の従業員がそろっているのですが、ピリピリ感がない。

お店の空気はそのまま香港のお店です。

30ドルのワンタン麺なら良いけれど

日本人としては、和食であれば、ましてや200ドルの海鮮丼ですから、

やっぱりお客様として緊張して接客して欲しい気がします。

これは、文化の違いなのかも知れないと気付きました。

 

 

経営者のMr.Smuel Chu(サミュエルさん)にお話を聞いてその理由が分かりました。

香港では、どの飲食店でも従業員を定着させることに苦労があると言います。

同じような仕事はいくらでもあるので、

少し細かく注意をすると、だったらもっと簡単な店で働く、と去って行くそうです。

従業員を定着させるためには、

売上達成のインセンティブやあれこれをモーチベーションを

高める努力は欠かせないようです。

あまり厳しく緊張させることは出来ないですね。

日本も似たような状況はありますね。

 

とはいえ、4人に1人が日本へ旅行する香港、

そのうちに香港でも日本的サービスの雰囲気が

現地の人からも求められて行くでしょう。

 

和食はトータルの雰囲気が重要です。

文化遺産ですから。

和食は文化なのです。

それは「しつらえ」「よそおい」そして「ふるまい」がそろって完璧になります。

食事は、美味しければ良いのではないのです。

 

サミュエルさんは、日本のとんかつ・かつ丼のチェーン「かつや」も香港で

展開しています。

日本で勉強し、白木屋に勤務していた経験から、和食に投資したい人達から請われて

和食店ビジネスの道に入ったそうです。

日本語が達者で日本の良さをよく理解して下さっている若き経営者です。

メニュー開発は日本人シェフが必ず行うなど、

彼のミッションは、日本式ではない本当の和食をリーゾナブルに香港に届けること。

一方、サービスについても日本と香港の違いを認識し、チャレンジを感じていらっしゃる

ようでした。

 

是非、味の次にはサービスの質についても日本以上に素晴らしいという

レベルを実現して欲しいと期待しています。

 

是非、「豊洲水産海鮮丼専門店」豊洲入口

香港滞在の際、中華に飽きたら行って見てくださいね。

YK