Awayにさせない~クリティカルマス~
2021年9月26日
先日、リモートでセミナーに講師として登壇すると、画面に現れたのは全員が男性、しかも担当者も男性で女性は私一人。こうした状況は、リアルでもリモートでも特に管理職を対象にすると良くあることです。
「アウェイだ!」
日頃、男性と働くことに慣れている私であっても、おくびには出さないものの少し緊張します。特に、男性がユニフォームのようにそろってスーツを着ていると、アウェイ感はさらに強化されます。
女性ばかりの中に男性一人であったり、外国人の中に日本人一人であったり、どのような場合でも、少数派は個人差はあるにせよ、若干の居心地の悪さを感じるでしょう。
誰でもアウェイはあまり嬉しくない。しかし、女性はそうした状況に頻繁に置かれていることに気が付いていますか。特に立場が上になるとその状況はさらに増します。
スポーツでもアウェイでは、良い成績を出せないことが多い、不利であることは知られています。
自分の仲間(アイデンティティ)が少ない状況では、人は思う存分に実力が出しにくい。異質なグループの中におかれると誰でも不安になる、心理的安全性が脅かされてしまうのです。
私の場合、女性が多い場では自分の意見を自信を持って開示できるのに対し、男性が多い場では出来る限りデータを示すことで自分の説の正当性を示そうとし、結果、自分らしさが出しきれない傾向にあることを自覚しています。
社会心理学者のスティール・クロード博士は、少数派は常に自分の属するメンバーの代表としてふるまおうとするため、無意識のプレッシャーを受けると言います。
簡単な作業であれば、そのプレッシャーが背中を押し期待以上に良い成績をおさめるのに対し、難しい作業の場合、今度は「間違ってはいけない」という緊張につぶされていつもより上手く出来なくなるという実験結果が実証されているそうです
他方、私は外資系企業に勤務していた頃、外国人が多数の中に一人という状況は嫌いではありませんでした。帰国子女でもなく外国語のほうが流暢だというわけではもちろんありません。でも、なぜか気が楽だから不思議です。
恐らく、それは同席する日本人への忖度が不要になるからなのだと思います。また、職位や肩書(ヒエラルキー)によらずに、一人の意見を尊重しようという文化がより個人主義の国の人たちにはあるからかも知れません。
さて、これでお分かりのように、女性の管理職の数を増やす、というのは単に機会を平等に与えるという目的だけではなく、全ての人が実力を発揮するために心地良い環境を整えることに繋がるということです。
誰にでも居心地のよい組織を作ることに反対する方はいないでしょう。
そして個人の意見に耳を傾けるという姿勢を持つ、個人を尊重するという風土を作る。
女性活躍推進はその始まりにして欲しいと思います。
クリティカルマスとは:
学校や職場など特定の環境で、少数派が一定の数に達した結果、少数派であるがゆえの居心地の悪さを感じなくなること
参考資料:「ステレオタイプの科学」クロード・スティール著 英治出版
(YK)