違いが分かる日本人になりたい!
2021年10月15日
「出されたものは文句を言わず、ありがたくいただきなさい」
そう言われて育った方は多いでしょう。だから、残したり食べられないなどと言われたりすると、「なんて礼儀のない人だ」と思う人も多いでしょう。
日本では、旅館などが典型ですが、しばしば相手の希望を訊かずチョイスもなく「当店の自慢料理です」「季節のものを用意しました」などと相手が喜んでくれるだろうと自分が勝手に最高と思うものを提供する傾向があります。
「スープは飲み干してください」などと指示するラーメン屋さんもあります。
出された側は、出してくれた側の思いを慮ってありがたくいただく・・・
それが「おもてなし」をする側される側のマナーとされてきました。でも、本当にそうなのでしょうか。
飛行機に乗るとき、特別食(スペシャルミール)をリクエストできることをご存じですか。お子様向けのチャイルドミールや、糖質制限やアレルゲン対応など体質や健康に関わるものや、菜食主義やヴィーガンなど食べ物への主義や趣向、そして宗教に配慮したものなどそれは驚くほどのバラエティに富んでいます。
キャセイパシフィック航空のCAであった私は、当時、香港発ボンベイ(現在はムンバイ)行きのフライトのギャレーを担当すると、まず驚くのがスペシャルミールの数の多さでした。多い時では、カート4台分(つまり100食くらい)がスペシャルミール。つまりご搭乗するお客様の半分ちかくがスペシャルミールになります。
リクエストを忘れているというお客様もいますから、こうした便では、通常はお肉かお魚、というようなチョイスもベジタリアンミールかノーマルか、というようなチョイスに設定されています。
キャセイは香港をベースとしていますから、日本の航空会社と比較すると国籍は様々なお客様が乗っていらっしゃいます。
ひとつひとつトレイに席番号が貼られているので確認に席まで伺うのですが、お客様は席を交換しているから至難の技でした。「もう、同じもの食べて我慢してよ」と思ったものです。
しかし、このカート4台分の異なるミールが象徴していたものは、まさに「ダイバーシティ」だと、横山真也氏の『おいしいダイバーシティ』を読んで気づきました。
100人の人がいれば、食事の在り方も100人異なる。好みだけではない、健康の問題、主義の問題、そして宗教の問題。たかが食ではない、大切な価値観です。
最近よく、テレビで「ドバイに行ったらお寿司が人気だった」というような、日本食は世界のどこでも最高だと自画自賛するような番組を目にします。本当に外国人はそう思っているのでしょうか。
きっと海外で成功しているレストランは、その国の宗教や風土に合わせての工夫をしているはずなのですが、そのところはあまり伝えていません。
食の好みも習慣も一人一人が違うということに気づかないと、日本は「おもてなし」の押し付けの国となってしまうかも知れません。
十人十色と言いますが、十人十食。違いが分かる日本人になりましょう!
(YK)
参考: 「おいしいダイバーシティ 美食ニッポンを開国せよ」横山真也著
https://www.amazon.co.jp/dp/4907239440