本物を伝えましょう
2016年1月25日
日本人が大好きなお刺身。
基本の大きさは一寸だということご存知ですか。
一寸とは人間の口の幅。
一口で食べて欲しいから一寸以内に切るのが
原則だそうです。
長いものは折りたたんで一口で入るようにする。
大きいと美味しくなく
品もなくなるそうです。
美味しさの秘密はそんなところにもあるのですね。
お刺身の原型といえば、古代、生の魚を切って海の塩と橘類の酢とで食べた「なます」だそうです。
お醤油で食べるようになったのは、安土桃山時代のことだとか。
日本人は新鮮なお魚をその特性を生かして美味しく食べるために
切り方を工夫したり、たたいたり、時には湯通ししたり昆布じめなどなど
色々な調理法を見出したようです。
日本人は新鮮な食材を最高の状態で食べるために
工夫を凝らして来たのですね。
さて、お正月のTV番組と言うと
例年、和をテーマにしたものが多いようですが、
今年は特に世界の和食を話題にした
番組が目に付きました。
その中でも面白いと思ったのが
メキシコのお寿司屋さんに日本の寿司職人が素人を装って
弟子入りするという番組。
メキシコでは人気のお店ですが
すっかりローカライズされたそのお店のお寿司は
フルーツがのっていたり、
チリソースをたっぷりつけて出されたりなど
日本人の想像を超えるものでした。
寿司職人の握り方を見れば、お刺身を何度も何度も素手で触ってこね回して
なんだか職人さんの手あかだらけのようで、
見ているだけで食欲を失います。
そんな日本食をメキシコ人たちはとっても嬉しそうに食し
日本食が大好きだと、口々に絶賛しています。
あきれて見ながらも
考えてみれば日本人もかなり日本流に変化させてしまった
世界の料理があることを考えました。
例えばカレーライス、スパゲッティナポリタン、冷やし中華、などなど。
食が現地化して行くのも
味覚の差ですから止めることは出来ず
和食はもう日本人の手を離れて行くのも
ひとつのグローバリゼーションなのかなあ、、と。
しかし、そのTV番組の最後では、正体をあかした日本人の寿司職人が
皆の前で包丁をふるいお刺身を振舞うと
さきほどまでチリソースで喜んでいたメキシコ人たちも
こんなに魚が美味しいとは知らなかった、と拍手喝采。
素材を活かして最高の状態で喜ばせたいという想いで生まれた調理法は
どこの国の人の味覚をも動かすのですね。
クールジャパンと日本流なら何でも良いではなく、
正しい日本を伝えて行くことが
日本の価値を高めていくことだと思ったお正月でした。
(YK)
参考;「日本料理の神髄」 阿部孤柳著 講談社新書