会社の風土を作っているのは誰?
2019年4月25日
今年は、女子大学生や20代前半の働く女性たちに出会う機会に恵まれ、彼女たちの目標に向かう勢いとタフな精神に驚かされています。
好奇心が旺盛で、探求心を持ち、まずは実践してみる彼女たち。何に興味を持っているのか自分で分かっているので、勉強をする目的も自分の言葉で明確に述べることが出来る、そして社会貢献や新たなことを生み出すことにタフに時間を使って行動を起こすことが出来る。私の若い頃とは大違いです。
もちろん、こうした女性たちは全女性の数パーセントに過ぎないでしょうが、数パーセントでも前向きに社会に参画し変えようとする意志のある若者がいることにワクワクしています。
ところが、最近、ひどく驚き憤りを感じたこと。それは、ある会社で新入社員研修で女性社員だけに『お茶の出し方』が研修の項目にあったのを見たときです。たまたまその会社がそうだったのでしょうが(私のクライアントではなく、もちろん全ての会社ではありませんが)ペットボトルやプラスチックカップが主流のなか、まだそういうことを指導しているのだと驚きました。
最近は、ペットボトルを出すところも多いなか、会議にいらしたお客様に「お茶」を出すことも印象をあげ円滑な交渉を進めるには大切です。そして出す人が心を込めてお茶を入れることはビジネスであっても悪いことではありません。
何故、疑問に感じているかというと、①貴重な時間と研修費を使って教える課題なのか ②なぜ女性社員だけなのかというこの2点です。
昨今、多くの企業が「ダイバーシティ」を方針に掲げています。
しかし、方針と研修にこうした矛盾が存在することに多くの担当者が気づいていません。慣習だから、昨年もやったから、ということで続行しているのかも知れません。
ちなみに海外の会社では、お茶は自動販売機で出るものをすすめるか、あるいは雑用のパートの人が出してくれたりするので正社員で入って最初にお茶くみを指導されることはありません。
相当不思議な日本。「おもてなし」の国だからという理由では当然ないでしょう。
新入社員は初めての研修では、大きな疑問を持つことはなく素直に会社の組んだプログラムに従って、不安を覚えながらも一生懸命従おうとします。皆さんも、新人時代、ちょっと「変だな」と思う仕事も出来なければ認められないのだろうという心配から、一生懸命取り組んだものではないでしょうか。こうした雑用の先には、きっと活躍出来る舞台がある!と信じているからです。
「お茶出し」をうちの会社はしていないから大丈夫、というわけではありません。仕事に直接、関係ない、不必要な慣習ややり方を新入社員に受け継いでいることがないかちょっと考えて見てください。そうしたところにあなたの企業の「風土」を垣間見ることが出来ます。
こんな課題は、昭和の新入社員の話のようなのですが、昨今、日本の組織は保守化。採用から入社式までいっせにリクルートスーツというのも平成になってからの習慣です。
さて、冒頭にあげた女子大生たちが、この会社に就職したらどう思うでしょう。数カ月たつとこの会社の風土に自分はあわない、自分のやりたいことを他で探そう、と違う道を模索し始める人も当然いるでしょう。
が、だんだんと慣れてしまい会社の当たり前が自分の当たり前になって疑問も感じず(あるいは感じても面倒なので)現状維持を守る、このどちらかではないでしょうか。
そしてもっと怖いのは、会社の当たり前に慣れてしまうと、彼女たちもそのうち「お茶は女性が出すべきだ」「仕事と同様時間をかけて行うことが当たり前だ」と考えて、次の世代を指導するようになることです。
そして、その先輩たちが、無意識のうちに新入社員のモーチベーションをそいでしまっているとしたら、女性活躍推進はお題目のままになってしまいます。
案外、小さな自分の行動こそがメッセージになっていることを認識しましょう。
自分が厳しい体験を潜り抜けて来た人ほど、同じ境遇の人に対しては共感するより、厳しくなるそうです。
ロールモデルと気負わずに、自分の在り方が知らないうちに企業の風土を作っていないか、後輩に良くも悪くも大きなインパクトを与えていることを意識して、新入社員が迎えて時は「平成」から「令和」になるタイミングに自分自身が「あるべき」を引きずっていないか、見直してみてはいかがでしょうか。
(YK)