自信は自己評価
2024年11月1日
狸は化ける
「私、(手術を)失敗しないので」
と言い切る女医を主人公としたドラマが流行りました。
なぜ人気が出たのか、なぜなら多くの人が「失敗しない」と
言い切る自信を持ちたいものの、なかなか持てないからではないでしょうか。
中々、自信を見せるのは勇気がいります。
失敗したらどうしよう、
図々しいと嫌われないだろうか、
自分の実力を信じないとなかなか言えない言葉です。
でも「自信がある」と見せるか見せないかでは、仕事に重要な影響を与えます。
「自信がある」と断言すると、自信過剰だと思われるかもしれない。
でも「自信がない」と言うと、他人は不安になります。
実は、自信は自己評価です。
自分が感じとっている状態です。
自信=実力ではありません。
自信があるからといって実力があるとは限らない。
でも、「自信がある」ように見える人は、他人からは実力があるように見えます。
実力があるのに「自信がない」という人は、実力がないように見えてしまいます。
そして「自信がある」人に人は仕事を任せたいのは明らかです。
しかし、実力があるのに「自信がない」というのは悪いことばかりではありません。
なぜなら、謙虚な人だと人間性を評価されるからです。
最近の日本の男女の意識はかなり小さくなったとはいえ、国連からあれこれ指摘されるレベルがいまだに続いています。
若い世代の意識に関わらず、かなりマッチョな組織文化がいまだに多くの日本の組織にあるのが現状です。
それが「自信」とどのような関係があるのかというと、「男性は強くあるべきだ」というバイアスが
男性に「自信がありません」と言いにくくさせてはないでしょうか。
一方、女性は「私、自信があります」とは言いにくい。
謙虚さが美徳の傾向がビジネスの上でも相変わらずあるからです。
結果、実力はなくても声の大きい男性が昇進し、実力があるのにいつまでもアシスタントの女性が出来てしまいます。
実力とは別の話で経験がないから「自信がない」という人もいます。
しかし、人生は日々初めてのことだらけです。
過去に経験したことを応用して生きていると言っても
過言ではない気がします。
自分の応用力を信じてもいいのではないでしょうか。
期待をかけられたら、自信があるふりをしてみてください。
チャンスが来ないなら、自信があると宣伝しましょう。
SNSで自己演出しているように、仕事でも「出来る私」を演出しましょう。
自信を持つと経験が増えてくる、経験すると実力がついてくる、はず。
そして本当に実力がついてくると、謙遜しても他人には分かるようになるものです。
「私、失敗しないので」
言い切ってくれる人を、人は求めているような気がします。
自信を持つことは自分のためだけではないのです。
(YK)
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参考図書 「自信がないという価値」トマス・チャモロ=プリミュージック著(河出書房新社)
仕事を苦役をにしないために
2023年1月16日
全国でよく知られている団体に生鮮食品の宅配を定期的に頼んでいます。
昨年の夏、最初は感じが良かった配達担当者が段々と応対が悪くなり挨拶もしなくなってやめてしまいました。おそらく仕事が辛かったのだろうと想像していました。
担当者が代わったときに、また前任者のような応対をされると毎回不愉快になるので、彼のやる気を育てるために「承認しよう」と私は密かに決めました。
承認とは相手をほめたり認めたりすることです。
「存在承認」と「行為承認」の2つがあり、「〇〇さん、こんにちは」と名前で呼んだり、目を合わせて話したりすることで相手の存在を認めるのが「存在承認」。
「寒い中ありがとう」「今日は忙しかったの?」「重いのに大変ね」と相手の行為に前向きな反応を示すのが「行為承認」です。
こうした毎回ほんの数十秒の会話で承認を続けて、彼とは笑顔でおしゃべりするようになりました。
それなのに、昨年最後の配達日に「来週で僕、最後になります」と告げられました。
「僕の外に4人もやめるんですよ、それだけでわかるでしょう?」との言葉に、私の小さな承認だけでは彼の仕事の満足度は解消しなかった(あたり前ですが)とがっかりしました。
待っている人がいることが分かれば「自分の仕事は意義がある」と感じて頑張ってくれるのでは、と実は私の小さな実験でした。
「パーパス」という言葉を最近よく耳にします。
企業であれば「企業が存在する理由や目的」「存在意義」に当たります。
個人については「愛していること」「得意なこと」「世界が必要としていること」「お金を得られること」の4つの要素が重なる部分がパーパスになるのだそうです。
自分がパーツにすぎないと感じてしまう、誰でもできる仕事だし意義があるのかもわからない、と感じた経験は誰にでもあるでしょう。
私自身もCAとして働いていた時代「コーヒーですか?紅茶ですか?」と毎日毎日、重たいポットを抱えて腰痛に悩まされながら何の意味があるのだろうとむなしく感じていた日々もありました。そんな時にお客様に「君が担当で良かったよ」などと言われるとやる気がいっきに上昇したものです。
お客様と直接接点のある仕事は比較的、具体的に感謝されたり褒められたりすることがあるので、自分でモチベーションを上げやすいのですが、それでも仕事自体がきつかったり忙しすぎたりする場合には上司からの評価やいたわりがなければ続きません。
さらに他人からの直接的な評価がもらいにくい仕事では、自分の仕事の意義は確認しにくいでしょう。
あなたの部下が「自分の仕事には意味がない」と思っているとすれば、それは承認が足りていない証拠です。環境や本人の問題だけではありません。
そして驚くことに経営層や部長職のような立場になっても心から自分の仕事に意欲をもっている人は4分の1程度だそうで一般職と変わらないそうです。
また、金銭的インセンティブは量やスピードを上げるためには役にたっても、心の内なる火を燃やし仕事の質を高めることにはつながりにくいそうです。
仕事はつらいもの、お金を得るための手段だから仕方がない、人生の目的はそれ以外にある、と思っている方はいるでしょう。
お正月の休暇後、あー仕事に行きたくない、と感じた方は多いでしょう。
一方、同時に仕事がしたくてたまらなくなる休み明けもあります。
なぜなら、自分の存在価値は「仕事を通して得られる」ことが多いですし自己実現の手段でもあるからです。さらに、感謝されて役にたっていると感じるとき、誰もが仕事の苦労が報われると感じます。
仕事が苦役であるかどうかは本人の心の持ちようもあるけれど、他人の反応が左右するのです。
「あなたは私にとって必要な人なのだ」ということを示すことは人間だからこそできる行為ではないでしょうか。
仕事をする仲間や部下にはもちろん上司にも、仕事を通して自分に何かをしてくれる人に感謝や好意を示す承認で前向きに良い関係が築けるなら、大いに活用したいものです。
くだんの宅配担当者の最終日に次の仕事について尋ねると「有休が一か月も残っているので探します」とのこと。
早すぎるバレンタインの小さなチョコレートを渡しました。自分の存在は無意味ではない、と思って次の仕事も頑張ってくれることを願っています。
ねぎらいや感謝の表現は、お金もかからず誰にでも出来ます。誰もが「ここにいて良かった」「私は誰かの役にたっている」と思える世の中にしたいと思います。
それが「オモテナシズム」のある社会だと今年も信じて頑張ります。(YK)
参考図書:「ハート・オブ・ビジネス」 ユベール・ジョリー著 英治出版
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お医者様のおもてなし力
2016年3月15日
久しぶりに扁桃腺が腫れて発熱し
近所のかかりつけのクリニックへ行きました。
このクリニックはまだ出来て4年くらいでしょうか、
神経外科と内科を40代の先生がご夫婦でなさっているのですが
近所では大人気でいつも混雑しています。
というのも先生がお二人とも大変感じが良いのです。
目と鼻の先にある昔からある医院は
経験豊かな先生なのですが
いつの間にか閑古鳥になっているようです。
さて、私の扁桃腺は数日たっても抗生物質が効かないので
点滴をすることになりました。
ベッドに横たわっていると他の患者さんと女性の先生との会話が聞こえてきます。
「美人先生に会うと本当に元気になるんだよね~」
と高齢の男性の大きい声。
女医さんもセクハラがあるんだなあと思いながら
でも、そいえば、私の母も先生に面と向かって
「先生、かわいい!」と言っていたことを思い出しました。
この先生、美人というより、(いえきれいな方ですが)
いつも笑顔で、話し方がなんとも優しいのです。
そして何か診察の動作をするたびに
こちらにまず許可を求めます。
「背中でいいので音を聞いてもいいですか」
「血圧を図らせていただけますか」
そして、恐らくプロの先生にはいらぬ情報を話しても
「あら、そうですか」とじっくり聴いてくれるのです。
アメリカの病院へ留学経験がある方なので
きっとコーチングを勉強しているのではないか、
と憶測しています。
この丁寧な会話の結果、診察時間は長く、待つことも多いのですが・・
今日もその患者さんに
「ポリープはなかったのですよ~良かったですね」
と共感を示し
「その他の結果は5日後に来ていただけますか」と伝えて
「お待ちしています!ありがとうございました」
とにこやかな声で送り出す、まるでブティックかどこかの会話のようなのです。
最近は検査結果やレントゲンばかり眺めて
こちらの顔をまともに見てくれない先生も多いですが
病院にこそ優しい会話は必要だと思うのです。
深刻な顔に深刻な表情で返されたら心配になりますね。
好き好んで病院に行く人はそうそういないはずですから
緊張を解いて欲しいですよね。
町の病院であればなおのこと
患者さんが会いに来てくれるからこそ
成り立つ商売なのですから。
地域医療に政府が力を入れようとしている今、
患者さんと医者の信頼関係を築くには
お医者様のおもてなしマインド重要ではないでしょうか。
で、私の扁桃腺は快方に向かっています。
(YK)