logo

Columnコラム

新入社員に響いたこと

2018年4月8日

 

鴎の行列

社会人とはこういうものだから、世の中はこういうことだから、常識だから、といった理屈では新人は動きません。自分へのメリットを明確にしてあげることが必要です。

 

かつては「長幼の序」ということが言われて、一年でも先に入社した人や上司には失礼な態度はとらないことが当然な時代もありました。現在は、体育会系の部活動でもない限り、そんなことを言ったら、古い儒教的な考えだと思う人も多いでしょう。そして新入社員から見ると、上司であれ、先輩であれ、それだけでは必ずしも尊敬できる人であるとは限らないでしょう。

 

とはいえ、やはり言葉遣いから態度まで、先輩上司は自分をさておいて、新人の態度が気になります。そして社内だけではなく、対取引先、顧客まで日本では共通のルールが存在しています。それを覚えておかないと、新入社員は仕事以前で苦労します。

 

数年ぶりに新入社員研修を今年は行いましたが、いくつかアプローチや伝え方を変えてみました。

一つ目は、ビジネスマナーは組織で成功するために人に影響力を与えるために必要なスキルであるということ。相手が喜ぶからではなく、自分の意思をきいてもらうために欠かせないスキルであることを強調しました。自分自身の目標を達成するためにビジネスの影響力を駆使するために必要なのがビジネスマナーであることを、時間をとって丁寧に説明しました。これは男子社員が身を乗り出してくれました。

一方、女子社員には「あなたが素敵に見えるために」という一言が効果が上がるようです。ここでも男女差があきらかです。

顕著なのは身だしなみです。女子社員には「髪が顔にかかるのは失礼だから」というよりは「髪を上げたらとっても素敵」と伝えたほうが素直に聞き入れてくれるようです。

男子社員には「この人洋服のルールを知っているな。出来るな」と思われますよ、と伝えると急に身をのりだします。

いずれにしても相手を頭ごなしに否定することは厳禁です。

 

そして、もうひとつ彼らに響いたことが「Give&Give」という言葉でした。

「Win&Win」は新入社員は知っています。しかし、最初から「Win&Win」を求めてはいけないし、最初から「Win&Win」になるような成果をあげられないのが新人です。

だからこそ、最初は相手のためにひたすら努力してあげること、それでも新人の努力は相手には十分ではないだろうから、さらにひたすらGiveの姿勢で見返りは求めないこと。その結果、将来はもっと大きなGiveがどこからか自分に戻ってくるものだと。実は、これは私自身が痛いほど経験していることです。今覚えば、会社員の時代、「Give&Take」でばかり物を考えていたと赤面することが多いからです。

そして、より良い「Giver」であるためにどう行動するべきか、という視点でビジネスマナーを考えてもらいました。すると「こうしなさい」「ああしなさい」というルールの指導より、より自主的な行動や意見が生まれて来ました。

この「Give&Give」は彼らには響いたようで、フィードバックにも多くの新人がこの言葉を実践したいことの一つに書いてくれました。

 

異なる企業の新人研修を行ってみて、同じように学校を卒業しても就職した企業によって人生は大きく変わることをあらためて感じました。

就業条件や業種や職種の違いではなく、その会社の風土やそして迎え入れる上司によって、それぞれビジネスパーソンとしての育ち方は変わるでしょう。誰と出会うかが人生を大きく左右すると感じます。

研修講師の責任を逃れる訳ではありませんが、日々一緒に働く人の影響が一番大きいのではないでしょうか。

新入社員を迎えるということは、自分の姿勢を見直す絶好の機会かも知れませんね。さてまだ新入社員研修は続きます。この講師に出会えて良かった、と振り返って思ってもらえるように微力ながら頑張ります!

(YK)

 

笑顔は習うより誉めろ!

2018年3月16日

Obama smile

どの業種であれ新人研修のカリキュラムに必ず出てくるのが「第一印象の重要性」。そしてそれに続いて、第一印象は表情で決まるとあり、笑顔の練習が行われるのがお決まりです。

口角を挙げてラッキー、クッキー、ウィスキーだとかハッピーだとか「いいい」と伸ばして練習をさせられた経験のある人も多いでしょう。

 

しかし、その笑顔はやがてどこへ行ってしまうのでしょう、と日本企業の不思議さを感じます。

管理職になると笑わなくても良くなるのでしょうか。もちろん全ての人がそうとは限りませんが、多くの会社の在籍年数の長い社員、特に男性社員の笑顔に出会うことは少ないような気がします。もちろんいつも笑顔の管理職の人もいますし例外はあるのですが、大多数が口角を下げて口を一文字に結んでいることが多いような気がします。

 

そのほうが偉そうに見えるからでしょうか。大企業や固めの業種の企業ほどその傾向が増すようです。

私も新入社員の頃(CAになる前です)にこにこと愛想を振りまいていると同僚から「そんなに皆にいい顔していると仕事が増えて損だから気を付けたほうがいいわよ」と忠告されてびっくりしたことがありました。「へー、にこにこしていると損ならば、ニコニコしている仕事に就いたほうが楽しいなあ」とCAに転職したわけではありませんが、笑顔でいて誉められることはサービス業以外ではそうないのかも知れません。

「へらへらしている」というような表現で特に男性は笑顔を奨励されない傾向があるのかも知れません。権威が下がるとでも思われるのでしょうか。

イタリア人を代表にラテン系の国民は、皆、知らない人にでも目をキラキラさせて笑顔を投げかけます。そんな様子を見ると日本人は「なんだか調子がいい」と言います。でもその一方でそれが魅力的であるとは心の中で思っている人は多いはずです。

そしてむしろ笑顔で人に向き合えるのは自信の表れだと思うのですが・・・

 

そうなのです。日本では、笑顔でいたからと言って面と向かって誉められないのですね。

道理で新人研修で笑顔を指導しても身につかないわけです。でもカリキュラムに「笑顔」が入っているのは、誰にとっても「笑顔は感じが良い」ということは分かっているからでしょう。

そしてたいていの上司は部下の笑顔を見たいと思っているはずです。

笑顔が自分に向けられると好感を持たれているのかな、仕事が楽しいのかなと感じられますし、笑顔がないと、何か不満があるのだろうか、機嫌が悪いのだろうかと思うは当然の反応です。

そして、「笑顔がある職場」をコミュニケーションがうまく行っている職場の指標として捉えている体もあります。

だったら自分も微笑めばいいのに。

 

私がよく訪れるあるビルの受付に笑顔がとても素敵な女性がいます。

おそらくパートタイマーなのですが、もう長い間そのビルの受付に勤務していて来客者と顔なじみになっていて、いつも人気がある様子です。先日、失礼だとは思いつつ「前のお仕事は何をなさっていたのですか。どこでその笑顔は身に付けたのでしょう」と聞いてみました。

すると彼女は旅行会社に勤務をしていたそうですが、笑顔の秘密は「母から子供の頃から美人ではなくても笑顔でいれば皆に好かれるから、とにかく笑顔でいなさい」と厳しく躾けられたのだと教えてくれました。そして「笑顔でいることを目標にしているので誉めて頂いて嬉しいです」と付け加えてくれました。

 

笑顔がある人は好かれます。笑顔でいるから、笑顔が返る。そして笑顔が返るから仕事も楽しくなりさらに笑顔になる。好循環が生まれます。

笑顔は連鎖するのです。

ということは、新人研修でラッキー、クッキー、ウィスキーだとかハッピーだとか口角をあげて笑顔の練習をするよりは、上司や先輩がにっこり笑いかけたほうが余程効果がありそうです。

そして良い笑顔に出会ったら誉めてあげること。

笑顔はまず自分から!

それだけで、周りの環境は驚くほどよくなるはずです。

誰にでも出来る「働き方改革」ではないでしょうか。

(YK)