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Columnコラム

グローバルに通用するマナーのおさらい

2022年10月5日

機内

コロナ禍ですっかり遠くなった海外。そしてインバウンド客もめっきり見かけなくなりました。が、いよいよ各国、そして日本もまた閉ざしていたドアを開けました。
日本人の国際化は進み、海外へ旅行することはそれほど特別なことではなくなり、むしろ海外離れともいわれるこの頃ですが、外国人と接する機会は増える一方です。

 

そこで知っておきたいのが服装のマナー。長い間、海外のファッション業界にいましたが、日本人に欠けていると思うところは、TPOの意識です。いやいや、冠婚葬祭のルールは守っているし、国葬でマスクをいっせいにしているのも日本くらいだ、という方もいるでしょう。

そうではなくて、もっと日常の話です。服装はその人となりを表しているという意識、そして場において服装が心を表すという意識です。

私は、服は自分が好きなものを着ればよいと思っています。

が、相手がどう見るか、どう感じるかという視点は持っておいたほうが得だと思うのです。

 

例えば航空会社によっては、席の調整のためアップグレードを行う際、服装を観察して選んでいることをご存知でしょうか。スニーカーを履いていてはファーストクラスにはアップグレードしてくれません。
それは、ファーストクラスという場の雰囲気を壊してしまうからです。もちろんお金を払ってくださるお客様には言えませんが、でもレストランにはドレスコードがありますから当然といえば当然ですね。

 

欧米人は、特にフランス人はある程度の常識がある人なら、その場その場において、服装を変える必要性を知っています。相手や目的だけではなく時間帯の服装というのもあるのです。

かなり以前ですが、シャネルに「5時から7時」というテーマのコレクションがあり、仕事が終わった17時から19時までにドリンクをするときに着る洋服をイメージしている、というのを聞いて感心したものです。

 

確かに、本社から来たフランス人の女性が仕事を終えて夕食の席に移動する際に、靴を履き替えていたことがありました。社長との会食に本来であれば、一度ホテルに戻って着替えたいところを時間がないので、靴だけはハイヒールに履き替えると言うことでした。彼女からは、日本の女性は通勤にミュールを履いているけど、フランス人はつま先の出た靴は昼間、まして職場では履かない、夜はドレッシーな靴に履き替えるのが嗜みだと教わりました。

 

イタリア人同僚は、昼間はTシャツで仕事をしていても、夜の食事の前にはシャワーを浴びてジャケットにポケットチーフで現われたりします。場に応じて着替える。もっとも通勤時間に時間を要す日本ではなかなかできないことですね。

 

また蒸し暑い香港で、きちんとした取引が想定されるビジネスの席で日本人男性がクールビズでノーネクタイであるのに対し、香港人の男性は上下のスーツを着用していたことがありました。暑い香港ですが、ビルの中ではクーラーは利きすぎるくらい利いています。本人に聞いてみると、これも自分自身が大切なビジネスパーソンと会うときのマナーで、服装は崩さないということでした。もちろん誰もがそうとは限りませんが、そうした心構えのある方は信頼できる気がします。

お客様の目より、同僚の目を気にして、目立たないように横並びの服装しているとしたら要注意です。

 

 

日本人は無礼講と言って型を崩すことが好きです。しかし、もともとは、厳しいルールや決まりがあって、相手の目線を意識していたはず。自分の「楽」よりも相手へのメッセージを重要視していたはずです。自分が楽であることと、気楽な人であるというメッセージとはまた別もの。

服装も自分のイメージ戦略ですが、スティーブ・ジョブズのように黒いTシャツを着れば仕事ができる人に見えるわけでもありません。

 

もうひとつ、気になるのはレストランでの御勘定の仕方です。日本人は、接待でもない限り割り勘でその場でお互いキャッシュを出して支払っている場面を見かけます。しかし、海外では、国によって異なる暗黙のルールがあります。例えば中国人は、割り勘は恰好良いものではなく、暗黙のうちに上手に交替で支払いをしているようです。これも日本でもキャッシュレス化が進んで、スマートなやり方は増えていくでしょう。

 

さて、飛行機のアナウンスから「Ladies & Gentlemen」が消えて、機内には紳士淑女はいなくなりました。しかし、なぜか機内でもホテルでも、隣に居合わせた若い女性は自分の部下、というような気持ちになるのか自分を優先して欲しい、また自分はクラブメンバーなのだから自分が先だ、という態度をする人はいまだにいます。

確かにレディファストを求めるのは時代遅れかもしれません。常に他者を大切に扱う仕草はジェントルパーソンとして男性も女性も身に着けておきたいものです。

 

欧米のビルのドアで、後ろを気にしてドアをおさえてくれる人、鉢合わせになったときに「After You(お先にどうそ)」という人に出会うと、なんて気持ちに余裕があるのだろうと感動します。

袖すりあうも他生の縁、相手に会釈をするという余裕こそ「おもてなし」です。

(YK)